離乳後の失敗

最近はInstagramのフォロワー数が増え、いろいろな農家さんの情報を写真や動画で拝見する機会が多くなりました。

牛飼いの日常や有益な情報を共有してくださる方もいて、大変勉強になっています。

さて本題に入る前に一点質問です。

離乳後に著しく痩せてしまった牛さんに対し、皆さんはどう対応されていますか。

今回は弊社の事例を紹介します。

該牛は分娩予定日から2週間早く生まれた虚弱なET産子(推定30kg前後の雄)でした。生後3日齢まで起立不能、飲乳欲廃絶といった状況で苦戦しており、親の初乳や移行乳はカテーテルにて強制投与を行なっていました。

「さすがに明日以降は強制投与をやめよう」と決めた矢先、4日齢から飲乳欲が改善され、自力で生乳を飲んでくれるようになり、8日齢になると自力での起立が可能になりました。

その後は中耳炎を発症(55日齢)したものの、大きな事故はなく95日齢で離乳しました(通常は90日齢で離乳します)。

本牛は95日齢で117kgでした。早産だったことを考えれば、まずまずの結果です。

(弊社では離乳時にK M式黒毛和種子牛体重推定尺(富士平工業株式会社)で体重測定を実施しています。)

しかし群生活を始め1ヶ月が経過する頃、なかなか採食量が上がらず、群にも馴染めなかったためか、著しく痩せてしまい腹囲狭小がはっきりと分かる体型になってしまいました。

「このまま群管理はまずい」と判断し、独房へ戻すことにしました。

ただ、当時悩ましかったのが「哺乳を再開するべきか否か」です。

第一胃が発達段階にある今、果たして哺乳しても大丈夫なのか、第一胃に入り込んで(逆流して)異常発酵を起こさないかという点を心配していました。

一方で低栄養状態なのは火を見るよりも明らかです。

取り急ぎの栄養哺乳には代用乳が良いだろうと判断した私は、過去自然哺育を行なっている黒毛繁殖農家さんで「約5ヶ月齢まで母子同居させ、母乳を吸わせている」という話を思い出しました。結局、代用乳の哺乳を少量から再開することにしました。

そして恐る恐る胸囲測定を行い、体重を推定したところ129日齢(離乳後34日) で 124kg という最悪な数値でした。

なんとかしなければ、という思いで早速今後の管理方針を立てました。

今後の管理方針

  • ひとまず1週間哺乳を継続(初回は500ml / 回とし、その後緩やかに増量(1.5L / 回を上限))
  • 育成配合飼料とTMR(Total Mixed Ration : 混合飼料)を設置し、計2kg / 日以上食い込むまで独房管理
  • 再び群へ入れる場合は本牛と同等orそれ以下の体型の若いグループに混ぜる

異常のように設定し、粛々と個体管理を行いました。

案外哺乳はスムーズに再開でき、3日目には上限の1.5L / 回まで到達しました。

乾物摂取に関しては、6日目に目標だった合計2kg / 日を達成しました。

安堵すると同時に群で生活していた頃は全く食べていなかったことを痛感し、反省した次第です。

哺乳再開後1週間が経過し、活力も腹囲も改善してきました。

胸囲を測定したところ136日齢で136kgでした。そしてこの時点で若い群れに入れました。その後2週間ほど注意深く経過を観察していましたが順調に飼料を食べ、同居牛とも馴染んでいる様子でした。

このグループと相性が良かったようで特に事故なく順調に発育していきました。

6ヶ月齢時に胸囲を測定したところ、183日齢で200kgでした。

また200日齢の時点で写真を撮りました。スタンチョン隣の個体(本牛は写真右。写真左は本牛より25日若い雄)と比較すれば体高の伸びがいまいちなのが分かりますが、腹はしっかり作れています。

この事例を受け、今後は離乳前の減乳期間(70〜90日齢)において対象牛がどのくらい固形飼料を食べているかを日々注視し、食の細い牛は10日〜2週間を目安に独房管理を延長することにします。

また離乳後は群編成に無理はないか、餌の食い込みが順調に増えているかどうかを注意して観察していきたいと思います。

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